2019年07月23日

立憲的改憲

著者は元検察官の衆議院議員。人権保障のために権力を統制する規範として憲法を理解する立場から、安倍政権下における憲法の無力化、あるいはその先に想定される、権力統制を弱める方向での憲法改正に強い危機感をもって、これに対抗する運動を呼びかけている。現在は、立憲民主党所属。

「安倍改憲」に対抗する政治運動として、「反対」を唱えるだけでは弱く、逆に権力統制を強める方向での憲法改正案を提示して国民に選択を迫るべきだと訴える著者は、自身の考えを「立憲的改憲」と名付けて、各界の専門家に、その是非を問う。本書は、7人の識者との対談をまとめたものである。

本書のおもしろさは、決して同志による慣れ合いの対談集ではなく、山尾プランの弱点や問題点もしっかりと浮かび上がらせる真剣勝負の問答が読めるところにある。

中でも、最終章に置かれた憲法学者・駒村圭吾との対談は、政治家と法律家の緊張関係を浮き彫りにし、山尾プランに対する最も本質的な批判となっている。

駒村は、「憲法に書かないと政策が動かないという日本政治の感覚が非常に心配です。憲法典をいじらないと一歩も先に進めない、あるいは改正すれば物が動くという感覚が透けて見えます」といって与野党問わず議論が憲法改正に収斂する傾向を牽制する。文言をいじる前にやるべきことが山ほどある。にもかかわらず、なぜ改憲なのか。何か現実から逃げていないか、と。そして、憲法の力を万能視することが、実は主権者=民主主義不信の裏返しなのではないかと、核心を突く。

規範・理念を専門分野とする法律家から、「政治家はぜひリアルでいていただきたい」と望まれる。それほどまでに政治家が空想的・神学的になってはいないかと問う最終部分の民主主義論は、立場を超えて必読。

立憲的改憲
山尾志桜里 著
筑摩書房
本体1,000円

野上由人

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