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2019年07月29日

日本には、伊藤計劃がいた。中国には、劉慈欣(リウ・ツーシン)がいた。

『三体』の意味

中国のSF雑誌『科幻世界』に2006年から連載され、2008年の単行本化から<三体(地球往時)>三部作で累計2,100万部以上を売り上げたモンスター小説。2014年には英訳版が出版され、翌年、アジア人作家として初のヒューゴー賞受賞。

これだけでお腹いっぱいになりそうな経歴を持つその第一部『三体』が、ようやく日本でも出版された。おそらくSFファンは待ち焦がれていたのだろう。発売一週間で10刷、10万部も目前である。

文革で父を殺された天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)は、政治思想犯として一線から身を引いていたが、ある日、巨大パラボナを備える謎の軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。

数十年後、ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に召集され、世界的科学者達が次々と自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体<科学フロンティア>への潜入を引き受けた彼を、怪現象<ゴースト・カウントダウン>が襲う。そして彼が入り込むVRゲーム『三体』の真実とは・・・。

二人の目線・時間軸を中心に、めまぐるしく世界が展開する。特にVRゲーム『三体』内部の異様な光景は、想像力を掻き立てられる。その内部は三つの太陽を持つ異星で、汪淼が初めて入った時、周の文王や紂王に出会い、137回目の文明が崩壊する。崩壊の理由は、『三つの太陽』である。古典力学の『三体問題』が発生しているのだ。一般解のない世界で、彼らは灼熱と極寒の太陽に滅ぼされ続けている。

『三体』への渇望

SFの醍醐味は当然ながら壮大な『フィクション』であるが、この作品は、基盤となる『現実』がバランスよく支えている。その現実が下支えする世界は、この先我々の世界でも起こりうる可能性を秘めている。少なくとも、そう感じさせてくれる程丁寧に作り込まれている。

特に、このVRゲームが現実のものとして操作出来たら、と願う人は多いはず。VRスーツも一般化されている今、そう遠くない未来に、この『三体』世界が可能になる日も。

読み終えた瞬間、第二部『黒暗森林』、第三部『死神永生』が待ちきれないのは他の読者も一緒であろう。第二部日本版は来年、2020年に刊行予定。それまでは、第一部を繰り返し読むことをオススメする。繰り返しの読書に耐えうる、稀有な作品。

三体
劉慈欣(著)
立原 透耶 (監修)、大森 望  (翻訳)、光吉 さくら (翻訳)、ワン チャイ (翻訳)
早川書房
本体1,900円

小熊 基郎
リブロ新大阪店 店長

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