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    【連載】 リブロプラスとは何か(9)
2019年10月15日

世界の全体を総覧できる場所。
【連載】 リブロプラスとは何か(9)

駅前の小さな路面店は、大変厳しい状況にある。もともと小さな売場、在庫点数が少ない。ひとつの商品をたくさん売ることでまとまった売上高を作ってきた。雑誌、コミック、文庫の新刊が主力商品。インターネット、電子書籍、スマートフォン。新しいメディアへ需要が移ると、その「量」を補填する有効な代替商材が見当たらない。店舗物件が自己所有ならまだいいが、賃貸の場合、駅前路面店の賃料は高い。売上が下がると一気に損益が悪化する。

リブロプラスでは、あゆみBOOKS文禄堂が、その厳しい状況に直面している。特に田町(三田)、早稲田、高円寺。学生を中心に若い読者ほど新しいメディアに移りやすく、支持者の減少に悩んでいる。ここ数年(リブロプラスに合流する前から)、文具の売場を作ってみたり、イベントスペースを作ってみたり、「代替」プランは度々起案・実行されてきたが、残念ながら減収を止めるには至っていない。

他方、老舗・新興ともに、小規模ながら定評のある名店は数多く、依然として注目度は高い。荻窪のTitleや吉祥寺のBOOKSルーエ、名古屋の七五書店など、個人的にも動向の気になる書店がたくさんある。最新状況は10月15日発売の『BRUTUS』NO.903「本屋好き。」に詳しい。

これらの書店が提供しているのは、選書の確かさである。売場面積に限りがあるので、たくさんの出版物の中からほんの一握りを厳選して陳列している。その選択に間違いがないと信頼されて支持を得る。どんな本でも通販で自宅に届く時代、他人が選んだ本の羅列をわざわざ見に行くには、それなりの理由がいる。

スペースが小さいからといって、取扱範囲が狭いわけではない。文学も、芸術も、科学も、流行も、娯楽も、学問も、社会のしくみも、人の生き方も。一通り揃っている。それぞれの分野の核心と先端を大胆に切り取って見せる技がある。世界の全体を総覧できる場所としての小さな総合書店。そこに価値を見出すのは、その全体を見たいという(特殊近代的な?)知のあり方を「趣味」とする人だ。

趣味の共同体から支持される本屋であるか否か。それが、生存競争の最低条件であろう。あゆみBOOKS/文禄堂には、存在理由と密接不可分な想定客層を見失うことなく、全国の同志と競いながら、そのクオリティを磨いていくことが期待される。リブロプラスに合流してからダメになったと言われないように、人材の確保と権限の適正配分には十分に配慮しなければならない。(次回に続く)

【連載】 リブロプラスとは何か(1)「昔のリブロ」ではなく、現在進行形の話をしよう。
【連載】 リブロプラスとは何か(2)取次と書店。
【連載】リブロプラスとは何か(3)商品部の役割。
【連載】リブロプラスとは何か(4)違いがわかる。
【連載】リブロプラスとは何か(5)東京・立川、オリオン書房。
【連載】リブロプラスとは何か(6)営業の中心は立川にある。
【連載】リブロプラスとは何か(7)新しい店をつくる。
【連載】リブロプラスとは何か(8)BOOK PARK miyokka!?
【連載】リブロプラスとは何か(9)世界の全体を総覧できる場所。
【連載】リブロプラスとは何か(10)「日販店舗運営株式会社」

 

 

 

野上 由人
営業本部長

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