2020年01月29日

こども六法

2019年のヒット商品である。類書がなかった。出版界をあげて反省しなければならない。こどもに教えるべきは道徳ではなく、法律だった。

六法は通常、憲法・民法・商法・刑法・刑事訴訟法・民事訴訟法だが、これはこども向けなので商法を外し、代わりに少年法といじめ防止対策推進法を加えている。文言は口語訳、総ルビではあるが、内容的には条文とその解説から成る。学者、弁護士等の専門家が監修に付き、何より明治創業の法律書専門出版社「弘文堂」から刊行されている本格派だ。こどもだけでなく、大人にとっても必要な情報が読みやすく書かれているので、読者はこどもに限らない。

人々が暴力や詐術によって権利を侵害されることのないように、国家権力は法律を制定・執行する。法律は、文明を言語化した人間社会の英知の蓄積であり、こどもたちに何より伝えたいこの社会の歴史と伝統そのものだ。私たちの安全と自由は、法律によって護られている。

刑法218条[保護責任者遺棄等]「子どもは生きるための世話をしてもらう権利がある」、刑法231条[侮辱]「その一言が罪になる!」、民法1条[基本原則]「人に迷惑をかける権利は認められない」、民法834条[親権喪失の審判]「助けてくれる大人は必ずいる!」、憲法19条[思想及び良心の自由]「みんなと違っていてもいい」。

小学生の頃を思い出す。画鋲とか落書きとか、典型的ないじめの被害者だった。高学年になり、社会科の授業で日本国憲法の存在を知る。「基本的人権の尊重」!なんてすばらしい理念だろうか。目の前の教室で繰り広げられている暴力が法に反する「間違い」なのだと知り、希望を持った。世界はもっと広く、私はまだまだそれを知らない。目の前の現実を全てと思い込むことはないのだ。そういう希望だ。

ベストセラーになったので、おそらくこのあと類書が各社から刊行されるだろう。それも含めて、法律教育に耳目を集めた本書の功績は計り知れない。トラブルのない人生はない。すべてのこどもたちに、届いてほしい。

こども六法
山崎聡一郎  著
弘文堂
本体1,200円

野上 由人
営業本部長

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