2021年01月25日

さぶ

いつか わたしのスキな作家の方が
山本周五郎作品がスキと言ってらして
そうなんだ…
とおもって
読んでみました

いわゆる時代小説でしょうか

もうひとりの主人公
江戸っ子の栄二が言う

うっちゃっといてくれ

など ふだん
あまりふれない言葉の数々が
新鮮です

「腕っこき」の職人栄二に

おら、おめえの重荷になるばかりだ

と言うさぶちゃん

そんなふたりの物語

これが だれかのアタマのなかでうまれて
語られている
ということを
ふしぎに感じます

さぶちゃんも
栄ニも
おのぶさんも
おしのさんも

ほんとうにそこにいて
泣いたり笑ったりしているからです

なかで
栄二が 自分の不運に腹をたて
恨みつらみでいっぱいのときに

いま、この
ー風に花の香が匂っているが、
おまえにわかるか

と言われて
そのときは
さっぱり響かなかったけれど
やがて

この隙間から吹き込む風の冷たさが、
どんなに冷たいかよくあじわうんだ

とおもう場面
これは
マインドフルネス
とも言えるなあ

また
さぶちゃんと独立して自分の店を持って
商売がうまくゆかずに
妻に仕立て仕事で稼がせて
情けないとなげく栄二に

とんでもない、
冗談でしょ、
人間が人間を養うなんて、
とんでもない思いあがりだわ

と おのぶさんが言います

この作品が発表された当時
一家の大黒柱が
家族を養うという感覚は
ごくふつうだったのではないかとおもいます

それを

思いあがり

と言いきっています

明治生まれの作者の
作品のなかの言葉というのが
びっくりしました

もしかしたら

性別
弱いもの
強いもの
をこえて
人間を描く
とは こういうことなのかな
とおもいます

栄二が さぶちゃんに言う

にんげんは一寸さきのことだって、
本当はどうなるか見当もつきあしねえ、
まして五年さき十年さきのことなんか、
神ほとけにだってわかりゃあしねえだろ

という言葉が
いまというときに
響きます

ふかくて
あたたかい
どこかで
いまを生きるわたしたちに
つながる
そんな物語です

さぶ
山本周五郎
新潮文庫

山口 敦子
リブロ 新大阪店

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